紅茶の日の由来

紅茶の日は、日本紅茶協会が 1983 年に制定した記念日で、毎年 11月1日です。語呂合わせではなく、江戸時代の史実に基づく日付である点が特徴です。1791 年 11月1日、漂流の末にロシアへ渡った船頭・大黒屋光太夫が、日本人として初めて外国での正式な茶会で紅茶を飲んだとされることに由来します。

大黒屋光太夫は伊勢国(現在の三重県)の廻船の船頭でした。1782 年に江戸へ向かう航海の途中で嵐に遭い、船は太平洋を漂流。たどり着いたのはロシア帝国の領域でした。光太夫は帰国の許しを求めて長い旅を続け、ついには女帝エカチェリーナ2世への謁見も果たしたといわれます。その滞在中に招かれた茶会が、記念日の由来となった場面です。

漂流者が飲んだ一杯

当時の日本は鎖国下にあり、庶民が外国の飲み物に触れる機会はほとんどありませんでした。緑茶の国から来た漂流者が、宮廷文化の中で香りの違う茶を口にした瞬間は、日本人と紅茶の出会いを象徴する場面として語り継がれています。光太夫は約 10 年に及ぶ苦難の末、1792 年に帰国を果たします。その体験は聞き取り記録としてまとめられ、後世には小説や映画の題材にもなりました。記念日の背後に、これほど劇的な物語を持つ例は多くありません。

現代の紅茶と 11月1日

いまや紅茶は、ティーバッグからペットボトル、専門店のストレートティーまで、日本の暮らしにすっかり溶け込んでいます。11月は気温が下がり、温かい飲み物がいちばんおいしくなる季節の入り口でもあります。紅茶の日に合わせて、紅茶メーカーや喫茶店ではキャンペーンやフェアが行われ、SNS でもお気に入りの茶葉を紹介する投稿が増えます。

今日は、いつものコーヒーを一杯の紅茶に替えてみるのもよさそうです。茶葉から丁寧にいれてもいいですし、ティーバッグでも構いません。230 年あまり前、異国の地で一杯の茶を前にした漂流者の物語を思い浮かべながら飲むと、いつもの紅茶が少し違った味に感じられるかもしれません。